スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。

-



「鋸碗匠」が映画の中に見られるのは、
中国映画「我的父親母親」。
日本では「初恋のきた道」という邦題で2000年に
公開された作品で、監督は、張芸謀(チャン・イーモウ)。
東京では渋谷のル・シネマにかかり、その時に観て、
数年後、銀座の映画館でも観た記憶があります。

華北の山間(やまあい)の小さな村を舞台にした
可愛らしい村娘の話。
穂を揺らす小麦畑や白樺林、黄葉に染まる山々を背にした
秋の野や、灰白色に包まれる一面雪の冬景色、
四季の風景が美しく、青年を一心に想う娘の一途さが
ひとの心をとらえる作品なのですが、
昔ながらの生活や風習にも目をひかれます。

「鋸碗匠」が姿をあらわすのは、物語の中盤、
天秤棒を担ぎ、カラカラと鐘をならしながら、
「瀬戸物直しはいらんかね…」と、
村の小路を歩いていく。

「お願いするよ、入って」と、娘の母親に招びいれられた
老鋸碗匠は、われた青花の器の破片を合わせ、
細縄で結び、糸を使った弓型の手廻しロクロで穴をあけて、
鎹(かすがい)を玄翁(げんのう)で、
コツコツ…と、叩いて打ちこむ。
短いけれど印象的な場面です。





IMG_20190314_080928.jpg
2019/3/14 08:27 com(0)

-



>> 私が子供のころですから、大正七、八年ころだったでしょうか、
山の手の屋敷まちにはよくロシア人の羅紗(らしゃ)の行商や
中国人のやきもの修理屋がやって来たものです。

日本人の行商とちがって、突然、堂々と玄関口から入って来て、
たどたどしい日本語で、土瓶かけ茶碗かけと言って
修理するものをださせるのが変っていましたが、
良いなおしをしていました。

弓型の手廻しロクロをあやつりながら、鎹(かすがい)の穴をあけて、
小さな槌(つち)で鎹(かすがい)をうちこんでゆく仕事が面白くて、
よく観察したものです。
震災のころまでは、こうした中国人の修理屋さんが
沢山いたのですよ…

「骨董勉強ノオト」 繭山康彦著より

2019/3/12 06:38 com(0)

-



>>たいていの瓷器(しき)は、ひなどりの膠(にかわ)と
糯米(もちごめ)の糊(のり)をまぜ合せたものをつけたうえ
縛って陰干しにすれば、強く接着される。

※瓷器(しき):土器より堅い焼き物。
 磁器成立以前の原始的なものをさすことが多い。

定窯(ていよう)の器皿が破損したときは、楮(こうぞ)の樹液を
もちいるべきである。樹液を濃く塗って、つよく縛ったうえで
陰干しすると、再びはなれることがない。

※定窯(ていよう):唐後期以来,河北省曲陽県澗磁村で
 おもに白磁を焼いた名窯。

官窯青磁(かんようせいじ)の破損には、ひなどりの膠(にかわ)と
青竹を焼いてとった灰アクとを混ぜて塗り、つよく縛ったうえ
湯で煮沸する。とりだしてのち三日〜五日間放置しておいて
解くと堅牢につながり、あたかも疵(きず)のないように
接着される。

しかし、ここに述べたいろいろな方法以外に、
本格的な修理の方法が、昔から中国に伝わっていた。
それは「鋸碗(チュイワン)」あるいは「鋸碗的(チュイワンダ)」
とよばれた修理人たちがおこなった鎹(かすがい)をつかう
なおしである。

天秤棒の両端に道具箱をつるし、小さな銅鑼をつけて
歩くたびに音をさせながら、街から街をながして
やきものの修理をしたもので、破片の接着部の両側に
手廻し式の弓型ロクロと銅針で穴をあけ、
熱した鎹(かすがい)を打ち込み、鎹(かすがい)が
冷却して収縮すると、破片がしっかりと固定される
しくみであった。
鎹(かすがい)は鉄、銅、真鍮などで作られていた。

「骨董勉強ノオト」繭山康彦著より



2019/3/10 23:24 com(0)

-


フランスの二枚の皿。
二枚それぞれに直しがされていました。

こわれた器ものの直しについて興味深く読んだのは、
古書市で手にした一冊の本「骨董勉強ノオト」。
1974年の「芸術新潮」誌の連載をまとめたもので、
その中の「鎹(かすがい)」という章で、器の直しについて、
綴られています。

1900年代のはじめ頃までは東京にもめずらしくなかったという
「鋸碗匠」のこと、インドとペルシアで特に多くの
鎹(かすがい)直しを見たこと、海外に居住する中国人の大半が
福建や広東など南方出身であるのに、この仕事をしていた
人々は決まって北方の山東省の出身であったこと等から
古美術商の著者の考察がされていておもしろい。

ヨーロッパにはふれられていないのですが、
軟らかな土ものの器に、鎹(かすがい)直しが
ほどこされているのは、時折、見掛けるので
どのようにこれほど広く世界に伝播したのか
知りたくなります。





IMG_7649_2019-03-15-03-39-52.jpg
2019/3/7 14:38 com(0)
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。